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抜歯はしないで/歯を持たせるということ

June 28, 2014

 世間で「歯医者で歯を抜かれた」という言い方をよく耳にします。もちろん事実なのでしょうが、歯科医としてはちょっと複雑な思いがします。たとえば医科で、「胃ガンをとられた」とか、「胆石をとられた」、あるいは「盲腸をとられた」という言い方はせず、「取った」と表現しますね。「歯を抜いた」という言い方ももちろんありますが、こと「歯」に関しては、「抜かれた」という受動態

(受け身)の表現がよく使われます。何か、患者本人の意志に反して抜歯が行われたようなネガティブニュアンスを感じますよね(笑)。

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できるだけ患者の歯を抜かずにもたせたいものだというのは、多くの歯科医が有する正直な気持ちだろうと思います。10人の歯科医が診て10人とも抜歯するしかないと判断するケースでは、残せるだろうかと悩むことはありません。でもそんなケースでも、ご本人が「どうしても残したい」と望む場合には、無慈悲に「抜きましょう」とは言えません。患者側が「抜いて下さい」と言うまで待っています。

 一番悩むのは、むし歯で歯冠崩壊の大きい場合や、進行を食い止めることが難しい重度の歯

周病の場合です。つまり、非抜歯でいつまでもたせられるか予測しにくい歯では、主治医は本当に悩みます。従ってこういう場合は、その歯に対するご本人の執着といいますか、思い入れの程度におつき合いさせていただくことになります。その歯がご本人の口の中で邪魔にならないように、誤解を恐れず言えば、「だましながら、なだめながら」もたせることも少なくないのです。しかしこうしたなかには、こちらの予想を上回って植立状態がよくなり、機能を回復する少数例もあるんですね。ですから簡単には抜けないのです。

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 一病息災とはよくいいました。本来は、ひとつ病気があるがゆえに、かえって摂生をするため長生きするという意味ですが、自分の病気を認めてこれとうまくつき合っていくという意味にも受けとれます。不安要因のある歯を早く抜いた後、義歯やブリッジを入れたり、高額ですが、インプラント(人工歯根)にし、それで悩みが解消、楽しく食事や会話ができるなら、それはそれで正しい

選択です。

 

 でもまた一方で、少し問題を抱えた歯を大事にし、一病息災で精神的・肉体的におだやかに生活していくことができれば、これはこれでまた一つの選択といえるかもしれません。どちらをお望みですか。

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